厚生労働省の労基法改正に関する2025年現在の審議会・研究会について

2027年労基法改正の議論を行う厚生労働省の審議会・研究会
2027年に予定されている労働基準法の改正に向け、政府内での議論が本格化しています。現在、議論は複数の審議会・研究会で段階的に進められています。広範な問題提起から始まり、徐々に具体的な論点へと深掘りされ、最終的に法案として集約されていく流れです。ここでは、法改正の行方を読み解く上で欠かせない4つの主要な会議体について、その役割と成果を簡潔に解説します。
1. 労働政策審議会(労働条件分科会)
位置づけ:
労働基準法改正の最終的な審議・決定機関です。厚生労働大臣の諮問を受け、労働者代表・使用者代表・公益代表の三者構成で法案内容を議論し、国会提出に向けた「答申」をまとめます。他の研究会での議論は、すべてこの審議会での最終判断に向けた地ならしと位置づけられます。
成果物(予定):
今後、各研究会の報告書などを基に具体的な法改正案の審議を行い、最終的な「建議」や「答申」をとりまとめる予定です。
2. 労働基準法における「労働者」に関する研究会
位置づけ:
今回の法改正の核心テーマである「労働者性」を専門的に検討するために、2025年5月に新たに設置された、現在進行形の最も重要な研究会です。学識経験者で構成され、フリーランスやプラットフォームワーカーなどを労働法の保護対象に含めるべきか、その判断基準を具体的に議論します。
成果物(予定):
今後、裁判例の分析や関係者へのヒアリングなどを重ね、労働者性の判断基準に関する報告書を取りまとめる予定です。この報告書が、法改正案の根幹をなすことになります。
3. 労働基準関係法制研究会
位置づけ:
現在の「労働者性」に関する専門研究会へと議論の橋渡し役を担った研究会です。「労働者性の判断基準が約40年間見直されていない」という現状を指摘し、より専門的かつ集中的な検討の必要性を提言しました。
成果物:
2025年1月に公表された報告書が具体的な成果です。この中で、労働者性の判断基準の明確化や、新しい働き方の実態に合わせた法整備の方向性が示されました。
▶︎ 労働基準関係法制研究会
4. 新しい時代の働き方に関する研究会
位置づけ:
より長期的かつ広範な視点から、テレワークの普及といった大きな環境変化を踏まえ、今後の労働法制全体のあり方を検討した研究会です。ここでの問題提起が、その後の具体的な法改正議論の出発点となりました。
成果物:
2023年8月に公表された報告書が成果物です。個々の労働者の健康確保の重要性や、柔軟な働き方を支えるための労使コミュニケーションのあり方など、幅広い論点を提示しました。
【参考】関連する補足的な議論
「働き方」全体の改革は、労働基準法の見直しだけでなく、育児・介護との両立支援や女性活躍の推進といったテーマと不可分です。これらの分野の議論も、最終的に労働者の働き方の選択肢を広げ、労働環境を改善するという点で、労働基準法改正の方向性と密接に関わっています。
- 柔軟な働き方の推進: テレワークや短時間勤務、フレックスタイム制の柔軟化は、育児・介護中の労働者の両立支援に直結すると同時に、労働基準法の労働時間管理のあり方そのものを見直す議論にも繋がっています。
- ハラスメント対策: 女性活躍推進の文脈で議論されているカスタマーハラスメント対策の法制化は、全ての労働者の安全配慮義務という労働契約法の基本原則にも関わる重要なテーマです。
これらの審議会・研究会での議論が集約され、2027年の改正に向けた具体的な法案の策定が進められていく見込みです。